スペースデブリ(Space Debris: 宇宙ゴミ)とは、運用を終了した人工衛星、ロケットの最終段、分離ボルトや破片、塗料片など、軌道上に残されたあらゆる人工物の残骸を指します。
現在、地上レーダーで追跡されている10cm以上のデブリだけでも約3万個以上、1cm〜10cmの危険な破片は約100万個、1mm以上の微小片に至っては1億個以上が低軌道(高度300〜1,000km)を飛び交っています。
低軌道を周回する物体は、秒速約7〜8km(時速約28,000km / ライフル弾の約8倍の速度)で飛行しています。対向軌道で正面衝突した場合の相対速度は秒速14km以上に達します。
運動エネルギーは「質量の1乗 × 速度の2乗」に比例するため、わずか直径1cmの小さなアルミ片であっても、衝突時の破壊エネルギーは手榴弾の爆発に匹敵します。10cmを超えるデブリが衝突すれば、稼働中の人工衛星や有人宇宙船は一瞬で粉砕・破壊されます。
2009年2月10日、シベリア上空約790kmにおいて、運用中の米通信衛星「イリジウム33」と、運用停止していたロシアの軍事通信衛星「コスモス2251」が秒速11.7kmで正面衝突する史上初の衛星同士の衝突事故が発生しました。この一度の衝突によって2,000個以上の巨大な破片が散乱し、現在も低軌道を脅かし続けています。
1978年にNASAの科学者ドナルド・ケスラーが提唱した「ケスラーシンドローム(Kessler Syndrome)」とは、軌道上のデブリ密度がある臨界点を超えると、衝突によって生じた破片が別の衛星に衝突し、さらに破片を生み出すというネズミ算式の連鎖衝突反応が発生する現象です。これが現実化すると、地球周囲が壊滅的なデブリの雲で覆われ、人工衛星の運用も有人宇宙探査も不可能になってしまいます。
現在、ISSや主要衛星は常時地上レーダーで監視され、デブリが危険距離に接近するとスラスタを噴射して衝突回避マヌーバ(DAM)を実施しています。さらに、近年では日本発の宇宙ベンチャー(アストロスケール等)やJAXA、ESAが主導する、ロボットアームや磁気プレート、レーザーを使って大型デブリを大気圏に再突入させて安全に焼却する「能動的デブリ除去(ADR)」の実証実験が進んでいます。
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